私たちは、1922年(大正11年)の創業以来、様々な技術開発に取り組んできました。特に、高度経済成長期以降、電力需要の増大に伴う鉄塔の大型化に対応するため、中空鋼管鉄塔、鍛造フランジなどの画期的な技術を開発し、国内の送電網の構築に大きく貢献してきました。近年では、鋼構造物の高経年化に伴い既存設備の維持管理が社会的課題となる中、独自開発の「NT-鋼構造物の長寿命化システム」や部材の補強・取替工法が、送電網の健全性の維持と長寿命化に力を発揮しています。
自社開発プログラム
TowerCableRespは鉄塔-架渉線連成系の動的応答解析を主目的とした、当社の自社開発プログラムです。風および地震の時刻歴応答解析のほか、静的釣合解析、固有値解析、周波数応答解析を行うことができます。
架渉線部は幾何学的非線形を考慮でき、断面情報、径間長、水平張力または弛度を基に、自動的にカテナリー曲線上にモデル化されます。当社の送電用鉄塔設計プログラムとの連携および解析アルゴリズムの改良により、高速で正確なモデル化・解析を行うことができます。
組み立てシミュレーションシステム
鉄塔をはじめとする鋼構造物の部材製作における現寸データは、製品の品質に直結する非常に重要なものです。本システムは、この現寸データ(部材データ)を3次元ソリッド化することで、CADでの組立シミュレーションを可能とします。
●システム活用例(設計構造検討)
組み立てシミュレーションした各々のデータの合成はもとより、既設構造物をスキャニング、光波測量等をもとに再現したデータと合成を行うことにより、包み込み工法等の現位置建替え検討が可能です。
送電用鉄塔においては解析プログラムとの連携により構造変更の反映が容易にでき、設計検討時の確認が短時間で可能になります。
部材補強・取替工法
主柱材耐力を向上
局地地形の影響による風速増加の見直しなどに伴い、既設送電鉄塔の耐風補強が必要となる場合があります。従来は中空鋼管の内部にコンクリートを充填する方法や断面を増加させるための現場溶接などが検討されてきましたが、施工設備が大掛かりになるうえ厳重な施工管理を必要とするため、必ずしも経済的な補強方法とは言えませんでした。
そこで、山形鋼を鋼管主柱材に添わせて、主柱材耐力を向上させるL添接材工法を開発しました。L添接材工法は、既設主柱材のフランジボルトを利用して山形鋼の支持金具を固定することで現場溶接が不要となり、短工期かつ確実な施工が可能となっています。
部材取替工法
従来の鋼管鉄塔の腹材取替は、標準的な工法が確立されておらず、また、荷重の大きな鉄塔では常時作用している腹材応力が大きく、既存の工具での腹材取替はできませんでした。こうした課題を克服するため、腹材取替治具(水平補強治具)および斜材緊張装置の開発を行い、腹材取替工法として確立しました。
腹材取替工法にはレバーブロック方式とギヤターンバックル方式があり、図1左と中央のように水平補強治具と斜材緊張装置で鉄塔を補強します。ギヤターンバックル方式は水平荷重の大きな鉄塔に使用します。水平補強治具と斜材緊張装置を操作し、既設腹材の応力を除荷することで腹材を取替えます。
荷重の大きな鉄塔では強度的に満足していても鉄塔のたわみなどにより、ボルトの取外しが困難な場合がありますので、その際は図1右のように斜材緊張装置を利用して構面の矯正を行います。
この腹材取替工法は、地震や地すべりによる不同変位で変形した鉄塔を矯正することも可能です。