近年、台風の大型化や集中豪雨といった異常気象、想定以上の大地震などの発生が懸念されています。こうした中で、社会の基幹インフラである送電・通信鉄塔は、過酷な環境下においても常に健全性が求められます。私たちは、長年の各種解析・実験を通して得られた高度な知見をもとに、最適かつ最新の設計を行い、お客様への確かなご提案を行うことで、社会的責任を果たしています。
鉄塔は、一般的に、クレモナ図解法を用いた平面解析で設計されています。
お客様からご提示頂く強風、地震などの荷重条件、および、電線、アンテナなどの各諸元をもとに、自社開発の最先端鉄塔設計プログラムを用いて、新設鉄塔の設計や既設鉄塔の強度検討設計を迅速に行っています。また、耐震強度評価設計や、不同変位が生じた鉄塔の強度検討設計では、立体解析や動的解析から得られた応力と部材の強度を用いて、鉄塔の安全性を評価しています。
平面解析よりも詳細に設計を行う必要がある場合には、立体効果を考慮することで実現象をより精密に模擬できる立体解析を行います。立体解析は、目的に応じて主に次の3つに分類されます。それぞれの解析モデルは、自社開発のプログラムを用いることで、高速かつ正確な作成が可能です。
□静的解析・・・・・時間によって変動しない荷重に対する応力解析
□動的解析・・・・・時間によって変動する荷重に対する応力解析
□不同変位解析・・・強制変位による静的解析
静的解析とは、時間によって変動しない荷重(静的な荷重)を受けて発生する応力を求める解析です。鉄塔全体を強度評価する場合には、部材を梁(ビーム)要素や棒(トラス)要素と捉えてモデル化します。また、部材単体や局部的な構造を強度評価する場合には、シェル要素やソリッド要素を用いてモデル化します。もちろん、これらの要素を複合的に組み合わせる場合もあります。解析手法としては、主に、応力とひずみが比例する線形解析、材料が降伏して応力とひずみが非線形となる材料非線形解析、大変形を考慮する幾何学的非線形解析、材料非線形解析と幾何学的非線形解析を同時に考慮する複合非線形解析が挙げられます。
動的解析とは、時間によって変化する荷重(風、地震など)に対して、構造物の共振性を考慮して、構造物の振動や発生応力を求める解析です。
特に、送電用鉄塔は、電気を送るための架渉線を支持しており、鉄塔と架渉線が相互に影響を与えることから、風や地震に対する応答特性は一般的な鋼構造物と大きく異なります。この応答特性の解析のため、私たちは、鉄塔―架渉線の連成系をモデル化して解析できるプログラム(TowerCableResp)の開発に成功しました。このプログラムには、長い間積み重ねてきた台風観測や振動試験の成果が反映されているため、実証に基づいた高精度な解析が可能です。
送電用鉄塔の大半では、4脚がそれぞれ独立した基礎を有しています。これらの基礎が地滑りや地震によって変位することを不同変位(不同沈下)といいます。不同変位が生じると、部材に付加的な応力が発生するため、新たに鉄塔の強度評価が必要になります。私たちは、基礎の位置データを実際に現地で計測し、同データから不同変位量を算出したうえで、この値を立体解析モデルの基礎部に強制変位として与えることで、不同変位解析を行います。これにより、極めて精緻な鉄塔の強度評価が可能となります。
なお、お客様のニーズに応じて、ボルト接合部の滑りを考慮した非線形の不動変位解析も可能です。