「九州電力送配電×日本鉄塔工業:トップ対談」挑戦を積み重ねた100年 未来へつなぐ技術力

九州電力送配電株式会社今村社長様が、20263月北九州地区の同社送電設備視察の折、当社若松工場を視察され、その後当社有田会長と対談していただきました。

対談内容は、当社創業以来100年超の歴史に関すること.鋼管鉄塔の開発(パイオニア)やメンテナンス事業などの技術力向上、開発に関すること、当社の現状と将来に関することなどでした。

また、最後に話題となった採用活動に関し、今村社長様から貴重なお話しもいただきましたので、ここに掲載いたします。

SPECIAL TALK

有田:本日はお忙しい中、当社工場視察にご来場頂き誠に有難うございます。

当社の鉄塔製作工場をご視察いただいたご感想はいかがでしたか。

今村:工場に一歩足を踏み入れた瞬間に、まず「歴史の重み」を感じました。

建物や設備からだけではなく、工場で働く皆さんの佇まいや雰囲気からも、長年積み重ねてこられた職人気質のようなものが伝わってきました。

ところで最近、創業100周年を迎えられたとお聞きしましたが、どのような歴史を歩まれたのでしょうか。

有田:はい、1922年にここ若松にて鉄塔工場として操業を開始し、関東大震災の復興を支援したり橋梁事業へ参入したりするなど、日本の近代化とともに100年を歩んできました。

事業環境の変化に伴う工場の新設や集約を経て、現在、生産拠点は若松に1本化しています。こうした中で、「九州に根差す」という姿勢は100年間一度たりとも変わっていません。

2022年の11月には100周年祝賀会を小倉で開催し、当時の池辺九州電力社長、廣渡九州電力送配電社長にもご出席頂きました。記念に頂いた「壺」は会社に飾らせていただいており、社員の誇りとモチベーション向上に大いに役立っていると感謝しています。

 

技術開発歴史の紹介

 

― 中空鋼管鉄塔の開発(パイオニア) ―

今村:地域に根差す経営を続けながら、送電鉄塔という高い信頼性が求められる製品を長年にわたり供給されてきた点に、御社の強みがあると感じています。

特に御社といえば、鋼管鉄塔のパイオニアという印象が強いですね。

有田:1965年に御社と共同で中空鋼管鉄塔を開発しました。

それまで主流だった山形鋼鉄塔に比べて、耐風性・施工性に優れ、現在では全国の送電鉄塔の主流となっています。台風の襲来が多い九州という厳しい自然条件のもとで磨かれた技術が、全国に広がったと自負しています。

 

― メンテナンス事業 ―

今村:当社としても、1965年の共同開発以降、御社の中空鋼管鉄塔を数多く導入させていただき、長年にわたり電力の安定供給を支えてきました。

それから約60年が経過し、当時整備した設備が今も電力を支え続けていますが、経年による劣化や腐食といった課題が顕在化してきています。

有田:ご指摘のとおりです。

鋼管鉄塔は自然条件等により内外面に腐食が発生し得るため、まずは鉄塔の状態を正確に把握することが、適切なメンテナンスを行う上で重要になります。

そこで当社では、御社のニーズを捉え、鋼管内部の状態を確認できる内面カメラによる点検装置を開発しました。

鋼管部材の内面にカメラを入れて錆の状況を直接確認することで、「どの部分が、どの程度劣化しているのか」を客観的に判断できるようにしています。

点検の結果、劣化が一部にとどまっている場合には、必要な箇所のみを処置する部分補修を行い、劣化が広範囲に及んでいる場合には、鋼管部材の内部全体を処置する全面補修を選択するなど、設備の状態に応じた最適な補修方法を適用します。

こうした鋼管部材内面の点検・補修技術は、2005年に実設備への適用を開始して以来、数多くの実績を積み、送電設備の長寿命化と信頼性向上に貢献してきました。

今村:鉄塔部材を製作するだけではなく、建設した後も、鉄塔という設備を「いかに安全に長く使い続けるか」を支える技術ですね。

有田:はい。そのとおりです。

そもそも送電鉄塔は、長年にわたり雨や風、海からの塩分などにさらされることで、どうしても錆が発生してしまう設備です。

そのため従来は、鉄塔の健全性を維持するために、作業員が高所に昇り、定期的に塗装を施すことで錆の進行を抑えてきました。

しかし、この塗装作業は高所での人手作業となるため、安全面でのリスクに加え、人材確保や作業負荷の面でも大きな課題を抱えていました。

そこで当社では、近年、こうした課題を根本から見直し、「鉄塔を製作する段階から、将来の維持管理までを見据えた対策を講じる」という発想に転換しました。

その取組みの一つが、高耐食技術の開発です。

この技術は、錆が発生してから塗装や補修を施すのではなく、製作時点で腐食の進行そのものを抑えることで、将来的な塗装や補修に頼らず、使用環境などの条件が整えば100年以上の寿命延伸も期待できる最先端の技術だと考えています。

今村:それはすばらしい技術ですね。

人手不足が懸念される将来を見据え、後から人の手をかけ続けるのではなく、製作段階で鉄塔部材の耐久性を高め、設備そのものの寿命を延ばしていくという考え方は、これからのインフラを支えるうえで欠かせない視点だと感じます。

この取り組みは、既設設備をいかに安全に、そして長く使い続けていくかという点で、送配電事業者にとっても大きな意味を持つものだと受け止めています。

 

― 高度な耐風技術力の保持 ―

今村:先ほど、風雨や塩分などの話がありましたが、九州は台風をはじめとする厳しい自然環境にさらされる地域です。特に強風対策は、送電設備の信頼性を左右する、まさに生命線だと感じています。御社の「風」に対する取り組みを教えてください。

有田:当社もまさに、九州における強風対策は最重要課題であると認識しています。

九州の自然条件は厳しいものがありますが、当社にとっては、そうした環境こそが技術を磨く原動力でもありました。

そこで当社では、九州特有の強風条件に対応するため、地元大学のいわゆる「風の専門家」と共同研究を行い、社員を研究室に派遣して耐風技術の高度化に継続的に取り組んできました。

この研究の成果として、強風時の鉄塔と架渉線が連成して挙動し応答を評価できる動的解析プログラムの開発に成功しました。高速で正確なモデル化と解析ができ、風だけでなく地震による挙動も評価できる画期的な技術となっています。

次に紹介するのは、電力関係ではありませんが、製作に参画した東京スカイツリー(20122月完成)です。これは鋼管鉄塔の解析技術と橋梁の厚板溶接技術の双方を備え持つ当社だからこそ成し得たものです。

総重量の約10分の1を当社が製作し、634mの高さに対して2㎝以内の誤差という超高精度な鉄骨組み立てを実現しました。この経験から当社が得たものは計り知れず、その後の新規事業分野へのチャレンジに当たり大きな自信に繋がりました。


 

災害復旧支援の紹介

今村:ここからは、自然災害時の鉄塔損壊などへの対応についてお聞きしたいと思います。

これまでお話しいただいたように、御社は厳しい自然条件の中で耐風性や信頼性を高める技術を磨いてこられましたが、そうした技術力は平常時だけでなく、非常時においても大きな力を発揮すると感じています。

送電鉄塔は、平常時には人々に意識されることなく、当たり前の暮らしを静かに支え続けていますが、ひとたび自然災害が発生して電力供給が途絶えると、その存在は一転して社会の注目を集め、一刻も早い復旧が求められます。

有田:そのとおりです。

当社は日頃の技術力の研鑽にとどまらず、その技術を自然災害という非常事態において即座に発揮できるよう、即応体制の整備にも力を入れてきました。

送電設備の早期復旧を担う一員として、強い使命感を持って自然災害に備えています。

その象徴的な事例の一つが、1999年の台風18号による50V設計の22V苓北火力線の鉄塔損壊です。

このときは、損壊した鉄塔4基の緊急復旧が行われる中で、当社は技術的な立場から原因究明に参画し、損壊メカニズムの分析や再発防止に向けた検討を行いました。

ここで得られた知見は、その後の業界全体の耐風設計の見直しや技術高度化に反映され、現在の技術基盤の重要な礎となっています。

また、2016年に発生した熊本地震では、先ず、50V中九州幹線No.29号鉄塔の座屈変形に対し、煙突支持鉄塔の原理を応用した囲み鉄塔による被災鉄塔との連結工法を提案しました。

次に、6V黒川一の宮線の緊急仮復旧工事においては、22V鉄塔を用いて、掘削を必要としないH型基礎と連結する新たな工法を、設計・製作の面から初めて提案しました。このとき、連結部材の製作にあたっては、通常であれば約1か月を要する工程でしたが、当社若松工場を連日連夜稼働させることで、結果として約10日間という超短期復旧に成功しました。

こうした熊本地震における一連の対応が評価され、御社より社長表彰を受領したことは、社員一同の大きな励みとなっています。

さらに、追い打ちをかけるように、翌年(20177月)には九州北部豪雨に見舞われ、九州の南北を縦断する重要な送電線路である熊本幹線周辺で大規模な地滑りが発生しました。これに伴い、特にNo.47号鉄塔では不同変位に伴い主柱及び部材に変形が生じたため、緊急復旧を行い、次に予想される台風に備えられるように迅速に対処しました。

今村:熊本地震の際は、広範囲にわたり停電が発生し、全国から発電機車が駆けつける非常に厳しい状況でした。そのような中で、協力会社の皆さまが一体となり、余震の続く中でも昼夜を問わず復旧に尽力くださり、頭の下がる思いです。

なお、50V中九州幹線No.29号鉄塔で座屈した実際の部材については、唐津にある九電グループ安全教育センターで保管し、自然災害の教訓を次世代に確実に伝えるための教材として展示しています。

私は、図面や資料だけでなく、実物を前にして学ぶことで、自然災害対応の重要性や、それを支える技術力の重みをより実感できると考えています。

送電設備の復旧においては、特に御社の高い技術力と的確な技術提案が発揮されたことで、極めて短期間で仮復旧が実現し、早期の停電解消につながりました。改めて深く感謝申し上げます。

有田:自然災害に関連したモノづくりを紹介しますと、1995年発生の阪神・淡路大震災の復興シンボルとなる鉄人28号モニュメントの建設にも携わりました(2009年完成)。

神戸の街の活性化に大きな効果をもたらしています。

 

製作工場を視察した感想

有田:これまで、当社の技術開発や自然災害対応の取組みについてご紹介してきましたが、そうした技術力や即応体制を支えているのが、この製作工場です。

今回、送電鉄塔の製作工場をご覧いただくのは初めてと伺っています。実際に現場をご覧になっての率直なご感想はいかがでしょうか。

今村:実際に工場を拝見させていただき、さらに会長から直接お話を伺う中で、多くの気づきがありました。

中でも印象的だったのは、塔脚の曲げ加工です。機械化が進む現在においても、最後は熟練した技術者の手でしか成し得ない工程が残っており、「やはり人の力があってこそのものづくりだ」と強く感じました。

また、設計面においても、台風の多い九州という地域特性を前提とした耐風対策の技術が随所に反映されており、長年この地で送電設備を支えてこられた技術の蓄積と経験の深さを実感しました。

製作現場と設計、そして人の技が一体となって、御社の高い技術力と信頼性を支えているのだと感じています。

有田:ありがとうございます。

九州の自然条件は厳しいですが、そうした環境の中で事業を続けてきたからこそ、技術も人も鍛えられてきたと確信しています。

今村:さらに、100年超の歴史を有する“伝統的な”会社である一方で、鋼管鉄塔のパイオニアとして、建設から何十年も経過した鉄塔に対しても、独自に開発された最先端のメンテナンス装置によって長寿命化を実現している点は、非常に心強く感じました。

「最後まで責任を持って支え続ける」という姿勢が、工場全体から伝わってきましたし、今回、製作工場を拝見し、さまざまなお話を伺う中で、御社は当社にとって送電設備のいわば「ハウスメーカー」の存在であり、九州の電力インフラに対する貢献度が極めて大きいことを、改めて実感しました。

この場をお借りして、これまでのご尽力に心から感謝申し上げます。

有田:大変ありがたいお言葉をいただき、心より感謝申し上げます。

「最後まで責任を持って支え続ける」という考え方は、創業以来、当社が最も大切にしてきた姿勢です。

送電鉄塔は、数十年にわたり社会を支え続ける重要なインフラであり、その一生に寄り添い、維持・発展に責任を持つことこそが、私たちエンジニアの使命だと考えています。

今後も、御社に信頼いただけるパートナーとして、技術と人の両面から九州の電力インフラを支え続けてまいります。

 

鉄塔製作事業の今後の展望

今村:御社の「最後まで責任を持って支え続ける」という姿勢を、実際に事業として継続しながら、高い技術力を維持し、自然災害時には即応し、さらに長期保全まで担っていくというのは、相当な体制づくりと経営判断が必要だと感じます。

人材の確保・育成や設備投資、事業の優先順位づけなど、経営面ではどのような考え方で取り組んでおられるのでしょうか。

有田:鉄塔事業については、関西電力送配電さま、中国電力ネットワークさま、電源開発送変電さま、そして御社を主なお客さまとして取引いただいており、とりわけ御社には長年にわたり大変お世話になっています。

こうした安定した事業基盤があるからこそ、技術力の維持・高度化や自然災害時の即応体制、長期保全への取組みを継続することができていると感じています。

一方で、事業を将来にわたって継続していくためには、やはり優秀な人材の確保と育成が不可欠です。

採用活動には非常に力を入れていますが、製造業全体で人材確保が難しくなっており、決して容易な状況ではありません。だからこそ、社員は会社の宝物であるという思想の下、単に人を集めるだけでなく、入社後に技術を身につけ、長く活躍してもらえる環境づくりを経営の重要課題として取り組んでいます。

 

次世代人材へのメッセージ

今村:電気は、水や空気と同じように、私たちの暮らしに欠かすことのできない存在です。

その供給を担う我々九州電力グループは、発電所、変電所、送電線、配電線といった膨大な設備を保有し、日々、電力の安定供給に努めています。

例えば九州の送電設備では、送電鉄塔が約25,000基あり、そのうち鋼管鉄塔は約6,700基にのぼります。

これらの設備を維持・保全し、さらには台風や地震といった自然災害に備え、万が一の自然災害時に迅速に復旧することは、送配電会社に課せられた極めて重要な使命です。

しかし、こうした使命は、決して当社だけで成し遂げられるものではありません。

日本鉄塔工業さまをはじめとする製作メーカー、工事会社、そして多くの協力会社の皆さまの支えがあってこそ、初めて実現できるものだと、日々実感しています。

是非これからも、高い技術力と信頼性をもって、力強く歩みを進めていただきたいですし、私たちにできることがあれば、遠慮なく声をかけていただきたいと思います。

また、これから就職活動を控えている方、あるいは現在活動中の皆さんにもお伝えしたいことがあります。

電力の安定供給を下支えしている日本鉄塔工業さまや工事会社の仕事にも、ぜひ目を向けていただきたいということです。
九州、そして日本の電力インフラを支え、安定供給に携わる仕事は、大きな誇りと責任、そして確かなやりがいを感じられる仕事だと、私は信じています。

本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

有田:こちらこそ、ありがとうございました。過分なお言葉を頂きとても光栄です。

今後も、技術と信頼に裏打ちされた100年超の歴史に安住することなく、最新の技術を次々に生み出し果敢に挑戦していく会社であり続け、御社の電力の安定供給に携わるとともに、事業を通じて社会に貢献してまいります。